英会話が継続できない
オンライン英会話の継続のため、習慣化を目的としたアプリを使っています。同じ目標を持った人たち同士でグループを作り、お互い励まし合いながら習慣化していきましょう、というアレです。
しかしこれが本当に続かない。皆さん最初の1~2週間は「習慣化を頑張ります!」と言って週に2、3回レッスンを受けていますが、1か月経つ頃には週イチ~10日に一回になり、2~3ヶ月後にはフェイドアウトしていきます。もしくは1~2カ月集中してレッスンを受けたところで「自分には向いていない(効果が感じられない/レッスンが辛すぎる)ので、別の勉強法に変える」「会社の補助期間が終わるのでやめる」という宣言と共にいなくなります。私はこのアプリを1年数カ月使っていますが、大体三ヶ月で私以外の全員が入れ替わっています。私のグループは14日間活動がゼロだと自動的に離脱処理がされて、新メンバーの募集が始まる設定になっています。みんな続けられない事に罪悪感を持ってるっぽくて、それを繰り返すと、益々英語嫌になるんじゃないかなと思ったりします。
先日下記の記事を見つけたのですが、これは自分の実感とも一致していると感じました。振り返ると、自分自身はオンライン英会話で過剰な緊張や忌避感が無くなるのに半年位かかった気がするので、止めたくなる気持ちは分かりすぎる。もうちょっとだけ頑張れば楽しめるようになれたかもしれないのに、とても惜しいですが、いや、でも辛いよね...。
メンタルブロック
他の方も散々同じ事を言っているし、最近レッスン中に各国の先生方とも同様の話をするのですが、これはひとつにはやはり日本の教育の特色が関係しているのだろうと思います。
昔の日本の義務教育は教科書を読んで授業を聞けばすべてが理解できる前提ですから*1、間違える=悪だし、恥ずかしい事で、間違えれば先生に怒られたりクラスメイトに笑われるのが当たり前とする価値観が基本になっていたと思います。真面目に授業を聞いているのであれば出来ないはずがない。それが出来ないのは不真面目で怠惰だから、と思い込む傾向がある*2*3。
これはある種の教科やジャンルではうまく行っていたのだと思いますが、「外国語を話す練習」には適していません。私の現状の理解では、結局のところ外国語を「話す」ためには、自分の感情や思考と、発声の接続回線を少しずつ太くしていくしかないのです。一気に太くなったりはしません。進捗はほとんど目に見えないレベルです。「さざれ石の巌となりて苔のむすまで」ぐらい全然上手くなった気がしない。だから間違いなんて気にしている暇はない、は言い過ぎかもしれませんが、一番気にしなければならないのは、相手に自分の意図が伝わっているかどうかだと思います。間違いを恐れて言葉を失っていては、明らかに間違ったメッセージを発する事になってしまいます*4。
しかし頭ではそれを理解していても、この呪いのようなトラウマのようなメンタルブロックを打ち破るのは難しい。間違いを恐れるな!と急に言われてはいそうですねと出来るなら誰も苦労はしません。
先日話した東欧の先生は「日本人は間違えるとみんな謝るよね。間違えて、直して、そのために僕らがいるんだし、そのためのレッスンなのにね。」と笑っていました。いわれてみると、英会話のレッスンで間違いを指摘されて謝るのってどういう心理状態なんだろう?一体誰に謝ってるんだ自分...?
しかも大半の日本人は実際のところ、外国語を使う機会なんてほとんどありません。英会話が出来なくたって日常に支障はありません。苦労してまでメンタルブロックを打ち破る理由がない。こんなものが続くわけがないよなあと思います。
そんなにやってられる?
更に言うと、私たちは外国語の習得をかなり軽く見積もっているのではないかと思います。正直、英語を真剣に始める前の私は深く考えていませんでした。こんなに時間と労力がかかるとは!
諸説ありますが、日本人が学校を卒業してから、英語で意思の疎通が出来る最低ラインに到達するまで、最低でも概ね2,000時間はかかりそうです*5。
もし25分のオンライン英会話だけを週に1回続けていくと、2,000時間積むのに約13年92年以上*6かかります。みんな大好きDuolingoを毎日5分やったり、英会話をたまに週2回に増やしたぐらいでは、先が全然見えなくて辛すぎる。盆暮れ正月飲み会冠婚葬祭旅行出張、何があろうと毎日1時間を英語に費やしても1年で365時間。2,000時間に到達するには5.5年かかります。とにかく無茶苦茶覚悟が要ります。しかもそれでやっとスタートラインに立てるぐらい。私も含めてみんな士道英語不覚悟なんですよ。
もちろん英語を話せるようになりたい人でオンライン英会話だけをやっている人はあまりいないと思います。何をもって2,000時間か?というのは大きなテーマではあります。コミュニケーションの構成要素という研究があるらしくて、私はそれをぼんやり参考にしています*7。まずはリスニングですよねーやっぱり。
私たちは 1 日の約 9 パーセントを書くことに、16 パーセントを読むのに、30 パーセントを話すのに費やし、なんと 45 パーセントをリスニングに費やします。聞くことは実際に最も一般的に使用されるコミュニケーション スキルですが、最も軽視されたり忘れられたりするスキルでもあります。
SNSでは朝5時に起きて毎日オンライン英会話のレッスンを受け、通勤時間も英語漬け、帰宅しても英語のブラッシュアップに余念がなく〜みたいなTOEIC高得点インフルエンサーを見かけますが、あの方たちは非常にレアな、スーパースターに近い存在だと思っています。おお皆さん、どうしてそんなにちゃんとしているのか。私のような人間には5回生まれ変わっても無理。しかしだらしない人間はだらしない人間なりに、ある種の諦めをもってノンビリ英語に触れ続けていくしかありません。
英語は世界的に見てもとても大きな産業で、少なくない日本人が時間とお金をつぎ込んでいると思いますが、実際のところ、仕事で英語を使う事もなく数年に1回海外旅行に行くかどうかの日本人が、多大な努力をして習得する程、価値があるものなのか謎です。少なくとも平日の自由時間はなくなります。しかも永遠に終わりはきません。本当に英語が好きで、趣味に出来たら幸せだろうなぁ。
私自身はイギリス通いを続ける間は続けざるを得ませんが、具体的な理由もなく何となくで英語の勉強を始めるのは、誤解を恐れずに言うなら時間とお金の無駄かもしれないな...と思う今日この頃です。
*1:今時の学校は昔よりは良くなってそうなイメージですが、身近に子供がいないのでさっぱりわからない
*2:前に南米の先生にこの話をしたら「あなたの話を聞いて今までレッスンして来た日本人生徒の謎が解けたわ!」といたく感心されてしまいました。
*3:社会においてもこの価値観を引きずっている人はいますよね。大抵の会議もその場で何かが決定する事がほとんどないのと似ているかもしれません。大体事前に決まってる。
*4:無言というのもひとつのメッセージですよね
*5:一般に日本人は義務教育で約700〜1,000時間の授業を受けていてーと言われていますが、私はこれも眉唾だと思っています。私の学生時代は学校の先生達は全員日本語を話していたし、そもそもみんな100%授業聞いてた?私は全然聞いてませんでした!
*6:計算しなおしてみたら25分*52週=1300分、2000時間は120,000分なので全然違った。死んじゃうじゃん!
*7:何度か別々の所で同じ説明を聞いたことがあるので、定説なのかな?と思っています。