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デップ×ハード裁判の薄い野次馬話

デップ×ハード裁判があと数日で終わるらしい。

Yahooのトップを見に行くと猿渡由紀さんによるこの裁判関連の記事が上がってくるので野次馬感覚で毎回読んでしまうのだが、正直言ってそれまでこの揉め事の経緯をよく知らなかったのである*1。日本語で「ジョニー・デップ」「アンバー・ハード」と検索するとジョニー・デップに同情的な意見が大半なのは、この方の影響が大きいのではないだろうか。アンバー・ハードの嘘が次々と明らかになってハード側に不利な流れです、という論調の記事なので。

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一方それとは全然関係なく、Mark Morriss*2(イギリスのロックバンドBluetonesのシンガー)とその元妻(ライター/作家)の揉め事*3は今年に入ってから個人的に何となくウォッチしていて、Twitterで夫側のファンと妻側のフェミニスト両陣営がやり合ってるのを時々チェックしている。こちらは裁判になっている訳ではないので、時々支持者同士の言い合いがある程度で、もう鎮火の流れかな*4

それはさておき、Mark Morrissの元妻側にはフェミニストが多数いて、その方たちは大抵みんなアンバー・ハード支持*5なのだ。日本語圏とはずいぶん景色が違う。感覚としては英語圏ではデップ派とハード派半々ぐらいなのではないだろうか。

ハード派は声が大きい。大学教授やジャーナリスト、メディア関係者等、フォロワーが数千人から数十万人もいるような人々(男女問わず)がハード側に立っている。しかし発言の内容を見ると今回の裁判に対してはどうにも主張が薄い。「数年前の裁判で既にジョニーの暴力は事実認定されていて~」「統計的に男性の女性に対するDVは~」「DV裁判における典型的な男性側の言い訳の論理が今回の裁判でも使われていて~」云々。ハード派の主張はどれも「それは今回の裁判とは直接関係ありませんよね」という内容に思えるのだ。今公開されている情報だけで、ハード側が100%完全に被害者だと言い切るのは割と無理があるのではないだろうか。

それに対してデップ派は概ね一般人が多いように思う。「どう見てもアンバーが嘘ついてるでしょう。男にもDV被害はあるんですよ!」みたいな。一般人 VS インテリ的な構造もあるように思えてその辺は興味深い。

多分アンバー・ハードは他人の同情をかうために話を盛る人で、ジョニー・デップは直接手は出さないにしても相当威嚇的・暴力的な酒乱で、二人とも嘘をついている自覚はなく、お互いがお互いを支配しようとしつつ依存するような関係だったんではないかと個人的には想像している。傍から見ると組み合わせが悪いけど、調子が良い時にはハーレクインロマンスのようなドラマチックな気分になれてさぞかし盛り上がった事だろう。美男美女って事になってるし。それはさておき。

何となく今回の裁判が終わってもお互いが「ほら見た事か!やはり正義は勝つ!」って言い合うような結果にしかならない気がするので、結局のところ私を含め世界中のゲスな関心を集めて楽しませてくれただけで、二人の溝だけでなく、世論の溝も深めただけだったのかなとむなしい気持ちにもなる。

アンバー派のフェミニストたちがいきり立ってアンバーは100%被害者でジョニーデップは最低最悪のDV男だと糾弾し続ける背景には、長らく本当にろくでもない男性が女性にひどいDVを行ってきた、ともすれば殺したりもしてきた、そういう事例を山のように見てきたせいなんだろうなとも思う訳で。

実際、直接殴られたりしないまでも、自分より身体が大きく、年上で大金持ちのセレブで、自分も仕事している業界に強い影響力を持つジョニー・デップに怒鳴られたり、壁や家具を蹴ったり、物を投げたりで威嚇されていれば、さぞかし怖かっただろうなと。しかも酒や薬で自制心を失っているかもしれないとなればなおさらの事。

逆にろくでもない女性が男性に対して物理的、精神的にDVを行ってきた事例もきっと沢山あって、今まではなかなか事件化されて来なかった*6という事もきっとあるんだろうと思う。

アメリカでは割と対応しているように見えるけど、イギリスだとそういう家庭内のいざこざで通報しても警察がなかなか動いてくれないという事情もあるらしい。裁判の結果がどうなるにしても、使いやすい逃げ支援機関*7を設けるとか、メンタルケアも含めた相談窓口を充実させるとか、男性にとっても女性にとっても現状の改善に繋がって欲しいなぁと切に願うのだ。男も女も、家庭や仕事や学校が上手くいかなかったら自己中に徹してまず逃げようと言いたい。家族の単位が小さくなってしまった昨今、家庭内の犯罪が世間から益々見えにくくなっているのは事実だと思うので。日本も同様。そうでないとジョニー・デップアンバー・ハードも報われないよなぁ。

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<2022年6月17日追記>

裁判は事実上、ジョニーデップが勝った形になったみたいですが、まだ色々騒ぎは続いている。アンバーが被害者だと信じる英語圏フェミニスト界隈は怒り狂ってるし*8、ジョニー派はここぞとばかりにアンバーをクソみそに罵っている。だんだん見るのが嫌になって来たところ、ついに冒頭の猿渡さんが自作小説を書き始めたのでもうこの人の記事は読む必要がなさそう。

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まぁアンバーは嘘つきなんだろうとは思うけど、どっちが暴力振るってたか振るってなかったかなんて、どこまで行っても第三者には分からんよ...。

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*1:ジョニー・デップに思い入れはなく、ウィノナ・ライダーケイト・モスの元カレが元嫁と揉めてるな程度の認識。

*2:この方にも興味があるわけではなく、たまたま目に入ったので野次馬(以下略)

*3:2021年の11月に元妻が婚姻中の喧嘩で起こった元夫の暴力(1回)と不貞(複数)に関する記事を自ブログで公表しネットメディアでも取り上げられた。それに対して2022年3月に元夫が不品行に対する謝罪と暴力については否定するステートメントを出した。

*4:暴力があった/無かったというのは結局のところ分からないけど、結婚しているにも関わらず複数のファンに手を出してた女ったらしのミュージシャン=女性虐待者なのかといわれると、それは違うんじゃないのと思ってしまうのは自分の頭が古いのかなぁ。不貞という夫婦間の問題に際して「女性虐待者」というのは主語が大きすぎるし、ミュージシャンとしての活動を妨害しようとさえしているのは明らかにやりすぎだと思う。

*5:興味のある方は #JusticeForAmberHeard #standwithamberheard #IStandWithAmberHeard 等のハッシュタグTwitterなどを検索すると良いと思います。

*6:いわゆる「Toxic Masculinity」的な意味でも

*7:そういや昔バイト先にコテコテのヤンキー女子(20歳ぐらい)がいて「友達があんまり男に殴られまくるから、10万渡して名古屋に逃がしてやった」とかそんな話を日常的にしていたのを思い出した。ちなみに当時の私たちの時給は630円。義侠心強い。

*8:ジョニーが自分のファンがアンバーをこき下ろしてるのを諫めようともしない事にも怒っている。自分らは散々ジョニーを罵ってきたくせにねえ。