ロックダウンのせいもあり、Youtubeをここ数年ずいぶん見るようになっている。Absolute Historyは時々好きな動画があるので、少し頑張って英語を聞こうかという気分の時にはお世話になっている。一番好きなのはRuth Goodmanが出ているFarmシリーズなのだけど、今回は中国のお墓のドキュメンタリー。
明の時代に漢民族に滅ぼされたという少数民族、ボー族には「懸崖葬」という風習があって、崖の数百メートルの高さのところ*1に棺を置いて死者を悼む。崖に棺が引っかかっている様子はシュールだ。
死者が天に上る・高い所から生きている私たちを見守る、というのは感覚として割と共感しやすいのだけれど、一体なぜ棺をあんな高さまで持ち上げようなどと無茶なことを考えたのか。あまりの高さに「当時は川の水面があの高さだったのだ」とか「ボー族は空が飛べた」などという伝説も生まれたらしい。
恐らく最初は権力誇示のためだったのだと想像する。一見してかなりの無茶で、酷いブラック企業っぷりである。葬儀としては世界でも指折りの難易度の高さなのではないだろうか。
木をくりぬいて作った棺はそれだけで相当な重さがあるようだし、川を渡って崖の近くまで行くのも一苦労。崖の数百メートルの高さまで棺を持ち上げる方法は番組内でシミュレーションされていたが、調査隊も危険で近づけないような場所にも複数の棺があった。
辛うじて生き延びたわずかなボー族の末裔だと言われる人たちが周辺にまだ住んでいて、棺の謎についての伝承を受け継いでいる事を匂わせているが、他言はしないのだという。この辺ははっきりしない。取材費目当ての嘘の可能性もあるかもしれないし、彼らが言うように、異なる風習を持つ民族であることが分かると馬鹿にされて村八分に合うのかもしれない。いずれにしても中国で少数民族として生きていくのは楽ではなさそうではある。
ヨーロッパで巨大な教会の実物を見るとシンプルに圧倒されるのだが*2、この崖の棺というのは西洋的な富の集中とはまた別の権力と狂気のようなものを感じさせる。
なんとかして、あのもろくて近づけない崖に残っている棺の調査をして欲しいものだけど、なかなかしばらくは難しそうですね*3。